岸田周三×カマチ陶舗
3つ星に輝いて11年。自分にしか生み出せない料理と、生産者との絆の深まり。
2017年度の仏版ミシュランガイドで2つ星を獲得したばかりの小林圭の使命は、「世界一の料理」を出すこと。つまり、ガイドの評価ではなく、お客様にとってどうだったかという勝負だ。お客様に、人生において、最も想い出に残るような、素晴らしいひとときだったと思っていただくための、日々の鍛錬なのだという。パラス・ホテルのようなゴージャスな空間ではないというハンディを、どのようにうめていくか。そこで、すべてのテーブルセッティングを、『レストランKEI』を至上のものとするための武器と考える。皿もその一つだ。
カマチ陶舗の皿を使う理由の一つは、まずその美しい色である。キャンバスに絵の具を塗ったかのように、その釉薬が光沢を帯びて、素地の表面に浮かんで見えるようだ。今回、手持ちの皿から選んでいただいたのは、写真のような、みずみずしく上質なグレーの皿。朝露を含んだ苔のようなグリーンもあれば、日本の夜の漆黒のブルーもある。またテクスチュアもさまざまで、ヨーロッパの表現にはない、和の良さがそこはかとなくある。一目惚れして、使ってみたいと思わせる、他の皿にはない個性と強さ、エレガンスがある。
また、カマチ陶舗の皿は、自然体だ。皿として完成しすぎてしまっていると、それ自身が邪魔になってしまう。皿自身も、食材と同様、ひとつの材料であると考える小林に取って、盛りつけたときに、一つの絵画として完成をする、皿としての懐の深さがあると考える。「料理は、まずは見た目であり、香りです。それで惹きつけることができないと、味にはたどり着きません」と小林はキッパリ。
「料理は空間そのもの」という小林にとって、レストランの客室という空間の中で、それ自身がどう見えるかということについての反芻にも、余念がない。同じ料理でも、同じテーブルの同席者に、さまざまなカラーの色の皿でサービスをすることもあるが、どう見せるか、どう楽しんでいただくかをとことん考え抜いているという証拠である。そこで、空間においてみてどう見えるか、必ず小林はチェックをする。スプーンを皿に置き、45度から眺めてみる。そして、そのスプーンが美しく見えるか否かを、自分の空間に相応しいか否かの目安とする。そんな皿との対話の時間は、クリエーションをもかき立てられる、研ぎ澄まされた時間に違いない。
Restaurant Kei
5 rue Coq Héron
75001 Paris
http://www.restaurant-kei.fr
3つ星に輝いて11年。自分にしか生み出せない料理と、生産者との絆の深まり。
アラン・デュカスグループから独立して、自身の店パピヨンをオープンしたクリストフ・サンターニュ。未知の世界と旅立つイマジネーションを皿に載せて。
3つ星『ル・サンク』のシェフ、クリスチャン・ル=スケールの秋の一皿。アーティチョークとケッパーのフライ、タイム/レモン。
生誕400年の歴史を持つ九州の焼物の産地から最新の「有田」を輩出するカマチ陶舗。フランスのシェフたちに、革新的でモダンな世界観の皿を提供。シェフの感性と皿の個性との出会いを紹介します。
DOMAは、11月12、13日、有田焼で知られるカマチ陶舗のイベントを、パリのレストランTOYOをお借りし、企画開催いたしました。