岸田周三×カマチ陶舗

『カンテサンス』が東京ミシュランにて3つ星に輝いて、今年の11月で10年の月日がたつ。オーナーシェフである岸田周三が、ヨーロッパから日本に戻ったのは2005年。以来、師であるパスカル・バルボーからエスプリを引き継いで、自分にしか作れない料理をと鍛錬を繰り返している。コンセプトは『素材』、『火入れ』、『調味』という基本。それを、とことん突き詰めることで、次なる境地が生まれるという。フランスの古典料理を徹底的に身につけ、たくさんの引出しがあるからこそ、徹底的な追求のなかに、未来への扉が潜んでいる。
フランス以上に食材のバリエーションに富むと感じている日本の素材へのこだわりがあるように、作り上げた作品を盛る皿も、岸田にとって一通りのものであってはならない。カマチ陶舗と出会って、自分の思うような皿を作り上げてきた。美しさだけでなく、機能性も追求した、大小の皿。いままでに試作を含めて作ってもらった数は30〜40種にものぼるという。
今回紹介する皿は、8年前にはじめてカマチ陶舗に作ってもらった皿である。墨絵に似て日本的であり、フランスの石畳をも思わせる、ニュアンスのある表情がある。この20センチ角の皿には、岸田のこだわりがたくさん詰まっている。『液体がたれてしまう皿は嫌、平らな皿もいい』、『端までもれる、料理の存在感が示せる大きさがいい』、『余白の美しさを追求できる皿』、『厚みが欲しい。ただ、サービスマンが持ち上げられるそりをつけること』、『ガラス加工では悩みどころの、指紋のつかない加工』など。こうした岸田の考えを、カマチ陶舗は、しっかりと受け入れながら、皿作りのプロとしての助言をしっかりと交えてコミュニケーションをはかり、着地点を見出していく。「無茶なお願いもきいてもらえますし、1度違うなと思ったら、ストップもしてくれる。自分のオリジナリティをリスペクトしてくれるので、信頼して皿を頼めます」。『カンテサンス』の皿は、岸田にとって迷うことのない、白、黒色が大半だ。大きさや柄を微妙に変え、料理の美しさを追求していく作業に寄り添ってくれる。
『ズッキーニのグラタン』。ズッキーニを1.2㎝の厚さに切り、全粒粉をまぶして火入れ。上に、バター、パルメザンのチーズと苦アーモンド、ブリオッシュの粉をまとめて板状にしたものを乗せ、サラマンダーで焼き付ける。ズッキーニには直接火は入れず、ジューシーなズッキーニの美味しさが迸るような完璧な火入れとした。その鮮烈さは、石畳に落ちる、初夏の雫のようである。