サロン・ド・ショコラの創始者、シルヴィ・ドゥースとフランソワ・ジャンテのインタビュー

パッションと感動、そして使命へ

DOMA
あなたの人生にまつわるチョコレートのストーリーを教えて下さい。
シルヴィ・ドゥース
私の人生における大切な4つの出来事でしょうか。
一番はじめの出来事は、『Gondolot/ゴンドロ』というビスケット会社の社長だった祖父の家での思い出です。そのスローガンは、フランソワ?
フランソワ・ジャンテ
あなたの『ゴンドロ』!
シルヴィ・ドゥース
そう、祖父の家にはビスケットのボックスがあちこちに散らばっていました。いろいろな種類のビスケットがありましたが、私はチョコレート・ビスケットが大好きで、そればかりを集めて食べていました。
2つ目は、タルティーヌのパンにバターを塗って、板チョコレートを木屑のように薄切りにしたチョコレートを乗せた、母が用意してくれたおやつです。この薄切りのチョコレートは、板チョコレートとはまったく違った食感や口溶けで、いいようもない喜びを与えてくれました。例え、経済的なアイディアから生まれた食べ方であるとしても。 3つ目は、チョコレートの製造会社で知られるヴァローナ社との出会いです。私はEvent Internationalという会社を1985年に立ち上げて、高級ブランドのパブリシティをはかるという仕事をしていました。主に香水の仕事が多かったですね。そんなときに、チョコレート製造会社のヴァローナ社から、高級ブランドとして売り出していきたい、そのパブリシティをお願いしたいという依頼を受けたのです。それで、《チョコレート・ナイト》というイベントを、プレステージのある場所で開催しました。そのときに、さまざまなショコラティエやシェフたちとの出会いがありました。例えば、メゾン・デュ・ショコラの創始者だった故ロベール・ランクス氏や、ジャン-ポール・エヴァン氏などです。
DOMA
4つめの出来事は?
シルヴィ・ドゥース
もちろん、私の夫フランソワとの出会いです。料理に対する情熱が変わらず一緒なのと、チョコレートが私たちを結びつけたといってもいいでしょう。そのころ、フランソワは、シェフたちを巻き込んだ食のクルージングを、フランス国内で企画していたのです。それから、サロン・デュ・ショコラを一緒に立ち上げた。それが私たちのアライアンスになったのです。
DOMA
このサロンは、世界的にも重要な存在になりましたね。
シルヴィ・ドゥース
はい。今や16ヶ国32都市で、210ものサロンを企画してきました。23年で、参加したシェフたちは2万6千人、950万人もの入場者をお迎えすることができました。情熱と感動に動かされ、そして、シェフや生産者の方々と築き上げてきたという使命とも受け止めています。
DOMA
持続と発展の秘密はなんでしょう?
シルヴィ・ドゥース
当時、ヴァローナ社やメゾン・デュ・ショコラのロベール・ランクス氏のような、素晴らしいチョコレートの推進者がいらした中で、情熱に導かれ、サロンのアイディアが生まれました。少々、熱に浮かされていたかもしれませんが、チョコレートは、性別も年齢も肩書きも、国境も超え、すべての人が手に取ることのできるリュクスであるはずで、そんなサロンがあるべきだと思ったのです。
DOMA
サロンは、マーケティングやコミュニケーションのプラットフォームでもありますよね。
シルヴィ・ドゥース
サロンは、出展者にとって、パブリックと直接に触れ合って、その反応を直接に得ることにできる場所です。と同時に、同業者や、世界中のメディアとの出会いもある。
そのため、反響を得て、パリに出展する海外のブランドも増えてきました。例えば、今年は、日本からは、20件もの出展社をも数えます。また2年ごとに、B to Bのサロンも開催しています。
しかし、サロンは商業的な目的だけではありません。チョコレートの文化的な側面もしっかりと伝えていくことも大事な目的です。マヤやアステカに遡るカカオの文化や歴史、そして、カカオの栽培もふくめて。そうした哲学が、多くの人々の心に響いているからこそ、続けてこれたと思います。

大地に根ざしたチョコレート

DOMA
パッションから感動へ、そして、使命へと突き動かされているのですね。
フランソワ・ジャンテ
20世紀のフランスのショコラティエたちは、チョコレートに革命を起こしたと言っていいと思います。それはフランス式のチョコレート、つまり《ガナッシュ》の登場でした。ガナッシュは、例えばワイン醸造家が、ブドウを表現してワインを作るように、ショコラティエは、ガナッシュによって、カカオの味わいを表現することが可能になったといっていい。チョコレートにノーブルな側面を与えたのです。フランスは、日本と同様に、素材を最大限にリスペクトして料理をするという文化があります。そのためには、優れた素材、そして知識を必要とする。ロベール・ランクス氏、ガストン・ルノートル氏、ジャンポール・エヴァン氏、あるいはベルナション氏は、それをやってのけた。私たちは、サロンを立ち上げた当初から、彼らとともにありました。
シルヴィ・ドゥース
私たちは、彼らと思いを分かち合っていたのです。そして今、若い世代が、メディアなどを通じて、この職業に興味を持ってくれているのを嬉しく感じています。25年前は、誰一人として、ショコラティエやパティシエの仕事を継ごうと思っている人はいなかったのですから。当時は価値のある仕事とみなされていませんでした。このサロンを通して、私たちは、シェフたちを仕事の現場から出して、パブリックの前に立たせるということを可能にしました。こうしたことが、価値の変化に一役買ったとも感じています。
DOMA
生産者たちへの影響もあったのではないでしょうか?
シルヴィ・ドゥース
またもう一つの、大切な使命は、カカオ栽培者たちの価値を高めることでもあります。その栽培を持続していくためには、正当な取引のもとで値段設定されなければなりません。それに、私たち消費者が、単純にチョコレートを食べることだけで、実は、森を保護することにもなるのですよ。なぜならカカオの木は、大木の下、その陰で育つのです。カカオの木を栽培するためには、大木、あるいは森が必要。森は私たち地球の肺、チョコレートを食べることで、地球を救っていることにもなるのですよ。
DOMA
次回の日本で開催されるサロン・ド・ショコラは17回目になりますね。
シルヴィ・ドゥース
実は、私たちとしては18回目です。初回は、大変なことだらけで、すっかり泣かされました。それでも、なんとか成功に導くことができた。すでに日本でのビジネスを始めていたジャン-ポール・エヴァン氏からの紹介で、伊勢丹との出会いがあって、2回目からは、彼らとのコラボレーションを組むことになりました。そのお陰で、ここまで拡大してこれたのだと思います。今年は、第1回目で開催した東京国際フォーラムに戻り、十万人を超える来場者があって、なんと入場に3時間待ちの行列ができるほどの評判でした。この17年を経て、日本人のショコラティエたちの、クリエーション力が驚くほどに上がっているのを感じています。
DOMA
今年のテーマは、『チョコレートとカカオの冒険者たち』ですね。
シルヴィ・ドゥース
はい、なぜなら、私たちはアステカに遡る彼方の昔から、チョコレートとカカオの冒険者であり、今もそうだからです。
チョコレートは、美味しい食べ物であるだけでなく、人間の文化としっかりと結びついていることを、声を大にして、言いたいと思います。どんどんと世界がバーチャルに傾いている中、私たちはどこへ旅立ってしまうのだろうと不安になることもある。しかし、チョコレートは、私たちの大地に根ざしており、そして、私たちを幸せにしてくれる。足を血に戻してくれる存在なのです。

http://www.salon-du-chocolat.com