クリストフ・サンターニュ×カマチ陶舗

「海の中のイカ、あるいは宇宙の中のロケットのように」

2015年の秋、クリストフ・サンターニュは自身の店『パピヨン』をパリ17区にオープンさせた。サンターニュは長らく、アラン・デュカスグループに従事していて、そのちょうど前までは、パラス・ホテル『ル・ムーリス』の料理長を務め、3つ星を維持していた。
1977年生まれのサンターニュは、グループ内におけるその昇進は目を見張るようで、誰もがその存在を、期待を持って注目していた。2002年には、『オー・リヨネ』という、パリでは歴史の深いリヨン風ビストロが、デュカスの傘下に入ったときに、25歳の若さで、そのシェフを任された。また、アラン・デュカスグループの全体を見渡すシェフというポストについて、世界中の見知を広めた後、2010年にはパリの『プラザ・アテネ』ホテル内の3つ星『アラン・デュカス』のシェフに就任、さらに『ムーリス』と、30代で、フランスのガストロノミー界を渡り歩いてきた。
そんなサンターニュが、いずれは自分の店を持ちたいという夢を、40歳を目の前にして実現させた。思い出すのは、『オー・リヨネ』の時代、ノルマンディー出身にして、リヨン料理を作ることの意義を、聞いたことがあったが、そのときに、「自分は郷土料理を心から愛しており、その思いを通してこの店の料理を作っている」と答えた真摯なまなざし。『パピヨン』では、サンターニュが望んでいたように厨房と客席が近く、料理や食後のマドレーヌを、彼自身が運んできてくれる。本質的な食卓の、溢れる愛に触れるひとときがある。

サンターニュは、カマチ陶舗のブルーの皿を目に留めて、すぐに手に取り、「深海の中、あるいは、宇宙のような色」と表現した。ブルーは、サンターニュの店のシンボル色、また彼が愛する色だった。レストランには、大理石の机のある小さな中庭に面した小部屋があるが、全壁がブルーに覆われた、まさにサンターニュの小宇宙。その場所が、カマチ陶舗の皿にぴったりと呼応した。
「海の中のイカ、あるいは宇宙の中のロケットのように」と、ユーモアを交えて仕上げた料理の名は「SPACE SQUID」。ガラスのような透明感あるブルーに、真珠のように光を放つイカのホワイトのコントラストが際立つ。大理石の机上におかれた皿は、何万光年をも一瞬にして旅する、あるいは無限の時間がそこにあるような、夢と創造力溢れるサンターニュの精神が宿っていた。そして、イカの闇には、ローリエ風味の米、海藻と牡蠣、ビュロー貝を詰めた。すると、魅惑と冒険のブラックホールができ上がった。