祇園さ々木の「花見八寸」

卯月の八寸「花見八寸」

4月は花見の季節である。

親しい仲間が集まり、桜を愛でながら食事の時間を愉しむ。

さて、そのとき何を食べるか?どこの料理屋にお願いすればいいのか、などなど考えることが多い。

「花見八寸は、そういったときに喜んでいただけるものだと思います」と佐々木は話す。

外で食べるイメージは、お重に詰めることから始まった。三段重が迫力と贅沢感。

上段は流しもの。

中段は造り。

下段は炊合せ、焼もの。

可憐な風呂敷を開けるところからこの八寸のワクワク感が始まる。

まず、上段の流しモノが目に飛び込んでくる。形は統一されているが、

色合い、風味、味わいなどがすべてことなる。

 

中段に移る。新鮮な色艶から食材が吟味されていることが分かる。

下段の炊合せや焼き物は佐々木の真骨頂である。

まながつおの幽庵焼き、鰻巻き、カラスミ、タケノコ、アスパラガスなど多彩な料理が詰まる。

というのは、この料理でお酒がぐっと進むことを考慮にいれた上のことだ。

 

下段の料理。カラスミはまさに酒を呼ぶ献立だし、

鰻巻きにしてもメインの鰻に進む前に酒と一緒にいただくものである。

酒があり、料理も酒もうまくなる下段なのである。

「花見には、どうしてもお酒がつきものです。

そのための三段重といってもいいかもしれません。

みんなでどれから箸をつけようかなど迷うのも花見の楽しみだと思うのです」

と話してくれた。

花見八寸の肝は、仲間が集まる場に提供されることである。

そのときどんな会話が飛び交うのか、そこまで考えるのが佐々木である。