Domaine de Galouchey、庭のワイン

卓上の友

「ヴァン・ドゥ・ジャルダン/庭のワイン」は、どこか懐かしい味がする。悠久の時間と、人の魂がしっかりとこもる、誰もが共有できる液体といったらいいか。だから、それは懐かしさに繋がり、記憶を呼び覚ます一筋の光のようにも似ている。

パリ11区「ヴァントル」でそれを味わうことができる。ヴァントルは、「ル・ブリストル」のシェフ・ソムリエを務めていたマルコ・ペルティエが、料理人のヤポコ・ショメルとともに、昨年9月にオープンしたビストロ。マルコは、ボルドーのラントル・ドゥ・メールの土地に「ドゥ・ガロシェ」というドメインを、友人2人とともに所有し、ワインを作っている。それがこの「ヴァン・ドゥ・ジャルダン」だ。

寛容でエレガントな味わいのワインは、食卓の悦びへと変わる。食卓にワインさえあれば、集う人々の間にはヒエラルキーもなく、誰もが正しい。とマルコ。マルコが、このワインのストーリーを語る。

 

 

 

庭のワインのストーリー

「ヴァン・ドゥ・ジャルダン」を一言で表すと

飲みたいと思うワインです。食卓にボトルを乗せ、ボトルが空になったときに、皆が顔を見合わせる。そうしたらどうするか? 暗黙の了解で、それをまた空けることになる。そんなワインです。

 

「ドメイン・ドゥ・ガロシェ」について

ガロシェは、ラントル・ドゥ・メールの慎ましやかな土壌にあります。ポムロルを生み出す粘土質あるいは砂土でもなければ、サン・テミリオンの石灰質もない、非常に難しい土壌です。夢中にさせるような場所ではありませんが、その土壌を受け入れて、我々はワイン造りをしているのです。


ストーリー

2002年にブドウを植えるまでは、この土地には人の手が入ることがありませんでした。つまり、この星が生まれて以来、馬や山羊はいたけれど、畑になったことはなかった。農薬に害されたことは一度もない土地なのです。 はじめのストーリーはこうです。ジャン・テラッドという世界各地を旅する男がラテンアメリカからやってきて、2000年にこの土地に住み着いた。この男は、私の友人であるジェラール・パンタナッチェと幼少時代からの知己だった。ジェラールが2002年のある日、この場所にやってきて、夜遅くまで飲んだ。それで、ワインのシャトーに囲まれた、この荒れた手のついていない処女地を目の前にして、酔いが回ったのも手伝って、ここを葡萄畑にし自分たちのワインを造ろうじゃないかと意気投合した。突拍子もない考えだったかも知れないが、2人は翌朝、苗木屋へ行って、この土地によさそうな葡萄の苗の助言をしてもらった。そしていいと言われた苗という苗をすべて手に入れ、それをこの土地に植えた。 初年は2005年。2008年の失敗を機に、僕がこの冒険に加わったのは2009年です。

 

信条のもとに

一番はじめの僕たちの目的は、友人たちのためにワインを造るということで、売ることが目的ではありませんでした。

1haもない土地に9種の品種の葡萄を植え、そのうちの5種が白の品種。このすべての品種をブレンドしたワインが生まれたのは、2010年でした。2009年と2010年の赤ワインの味わいがかなり強く、さらに白ワインの製造量が少なかったので、混ぜることにしたのです。こんなことから、「ドメイン・ドゥ・ガロシェ」は、フランスの等級をもらえなくなってしまいましたが、それはそれで構いませんでした。もともとボルドーワインを造るつもりはありませんでしたし。挑発ではなく、信条に従ったまででした。光を感じるような、フレッシュで垂直性のあるワインを目指しています。

もしも、いつか君がワインを造ることになったなら、自分が飲みたいワインを造ればいい。売れなければ、君がそれを飲めばいいんだからね。アンリ・ジャイエが冗談まじりにこういったのを良く覚えています。

 

手摘み、種抜き

おおよそ1haの土地に6200本。ブルゴーニュ式といいますが、かなり木と木の間が密集していて、もちろん機械がその間を入ることはできません。収穫には、26人の人たちに手伝ってもらい3日で収穫をすませました。機械だったら、ものの15分で終わるでしょう。収穫してくれる人たちにお願いするのは、食べたくない葡萄は摘むな、です。もしも少しでも傷がついていたら、桶にいれません。そんな風にして桶に入れられた葡萄は、まるでキャビアのように見える。職人芸による宝石のようです。

 

1本に6〜7房

生産量が少ないだけ、強さではなくエネルギーが凝縮されると僕たちは考えます。つまり、他の醸造所と比較をしますと、1本から25房を収穫するのが通常だが、我々は6〜7房にします。1本からの収穫を少なくする分、タンニンがしっかりとした、高いフェノールの熟成を得ることができる。結果、収穫の時期は、他の畑よりも1週間早い。植物のような味わいとか、芳醇な味わいははじめからしないのですが、酸や快活さは保たれる。何よりも大切なことです。

 

ブドウの木と大地の開花

はじめ、ブドウの木の根は、土地の表面に留まっていましたが、毎年それはのびて、4年目には10㎝になりました。2010年には、しっかりとした味わいのワインを造れるまでに至ったのです。2011年は厳しい年ではありましたが、しかしより深みや余韻が現れるようになったのです。

 

熟成と学び

はじめに申しましたように、土壌自身が非常に控えめなため、熟成もあまり必要ではない、10ヶ月でいいだろうと思っていました。ところが、自分の周りのプロたちにテイスティングをしてもらって意見を聞くと、このワインにたった一つ欠けているのは、熟成だといわれました。そこで2011年からは、タンニンの強さを壊し、香りを重層的にするために、古い樽で熟成を18ヶ月した。この年から、800ℓ分を3〜4年の熟成に挑戦することにしたのです。いつも学ぶことばかりです。

 

ワインのアイデンティティ

ワインは、土地自身が持つ特徴を表現する収穫物である。人の仕事は、それを上手く導いてあげることです。収穫物を昇華させる、高めるという言葉を使う人がいるが、僕はそうは思わない。このワインをテイスティングして、これは右岸のメルロ種で造った赤ワインだとわかっていただけたなら、非常に成功したといえます。つまり健やかな葡萄から造られたワインの象徴となるのです。

 

Bistrot Vantre

19 rue de la Fontaine du Roi 75011 Paris

http://vantre.fr

Vin de Jardin

http://www.vindejardin.com/